アフリカ![]() |
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![]() ヴィルンガ火山群の標高2800km付近に棲息するマウンテンゴリラ |
![]() ムハブラ山 |
![]() ムバヒンガ山 |
![]() サビニオ山 |
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ルアンダの首都キガリから、西の端にあるキブ湖の方へ向かって、キニギの町に入る。そこから、三つの山が見える。そこにマウンテンゴリラが生息している。 |
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ダイアン・フォッシーは、このゴリラの森で一人ゴリラたちと戯れていた |
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アメリカの喧騒から逃げ出し、シルバーバック(ゴリラのボス名)を求めて、この森にやってきた。 まだ、歳は31歳になったばかりであり、独身の女性であった。 |
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ダイアン・フォッシーがこのゴリラの森に住もうとしたのは、自分でもその理由が解らなかった。名目は研究ではあったが、本当の目的は別にあった。今の人類が忘れかけた大事なものを探しにいったのである。 彼女は、31歳という年齢でも、男性にあまり興味を持てないでいた。でも、誰かを愛したいという欲求は人一番強かったのである。当時、ゴリラの研究などというものはほとんど知られていなかった。でも、類人猿であることは知られていたが、地球上で、どのくらいの数のゴリラがいるのかも、把握されていなかったのである。 彼女の前にアフリカのウガンダで、男性の研究者はいることはいたが、その人に会っても、ゴリラがどこに住んでいるか、どこの何頭いるのかもあいまいであった。そのため、彼女はルアンダのムハブラ山で、ゴリラを探すことにした。 そして、森の奥地に、現地の猟師とともに、探していった。そして、始めて、彼女は野性のゴリラと出会ったのである。当時、現地ではゴリラは「黒い悪魔」として恐れられ、その話をすることさえ、嫌がられていたのである。 ゴリラを探すには、ゴリラの糞を探し、ゴリラたちの寝床の温かさから、何時ごろそこにいたかを推測するのである。ゴリラはほとんど群れをなしている。その群れが近いことが解るのは、ガサガサという音である。それは恐れを知らないゴリラの子供が、興味深く、しげみからのぞいている音であった。 そして、ボンボンという胸をたたく音(ドラミング)がしたと思うと、ドスにきいた低い大きな唸り声で、ウゴッ!ウゴッ!と、ダイアンめがけて、大きなシルバーバック(ボスゴリラ・・背中がシルバーなのでそう呼ばれる)突進してきた。そして、ダイアンに体当たりをくらわそうとしたのであるが、現地の猟師がでかい声をはりあげながら、長いて弓なりになった太刀を振り回して、それを制したのである。 シルバーバックは踵を返したが、それ以上近寄られなかった。近づこうとすると、また胸をドラミングして、吠え、体当たり攻撃をしかけてきたからだ。それからというもの、ダイアンは何とか、ゴリラの生態を調査しようとして、昔からある方法の「餌付け」をすることにした。ゴリラが好きそうな果物を用意して、飼い慣らし、遠くからその生態を観察しようとしたのである。 でも、ゴリラは他の動物のようにはいかなかった。非常に神経質であり、用心深かったからである。 ダイアンは自分の意志を通す方法には、三つあると思った。 1つは、強い力(権力)で相手をいうとおりにさせる方法(猿の芸を教える場合、相手を絶対服従させることが必要である。その場合、人は猿に噛みつき、押さえつけることから始める) 2つは、知恵で相手を思い通りにさせる方法(餌付けは相手の欲望を利用したもので、この例にあたる) 3つは、愛と感謝で、友達になる方法である。この場合には上下関係はない。それは相手との一体感が基本になる。 彼女は第3番目の「愛と感謝」による方法を選択した。それはゴリラとの一体化をめざすことになる。まず、自分はゴリラと同じ仲間であることを示すことから始めたのである。つまり、ゴリラと同じものを食べ、同じような行動をすることから始めたのである。 ゴリラが食べているものをダイアンは口にし、それを食べた。そして、食べた後に、ゴリラはゲップするので、自分も同じようにゲップした。歩き方も立って歩かずに、這って歩くようにしたのである。目線をゴリラに合わせたのである。 この方法によって、ダイアンはゴリラたちから、無害の動物であるという安心感を得たのである。そして、ゴリラたちと気持ちが通じることができるようになっていったのである。 2年もそのような生活をすると、どんなゴリラも名前で呼び合うように親しくなっていた。 |
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シルバーバックのボスであるチチはダイアンに名前を付けた。それは、彼女が、自分の名は、ダイアン・フォッシーという名だと言ったら、それでは呼びづらいので、フォッシーのフォをとり、「ホホ」という名がいいとしたのである。 ホホになったダイアンはチチにいろいろな事を聞いた。家族のこと、先祖のことなどである。チチは、年老いたメスゴリラのババから聞くように指示された。自分の役割はもっぱら、家族を守ることだけだと言い切ったのである。 ババから聞いた、ゴリラの先祖の話はこうだ。 昔は5部族のゴリラがいた。ゴリラの性格によって、それは別々の部族となった。この世を生き抜くためにどのような性格になったらいいかで、分かれた。 特別に、『泣いて笑って』を選んだチンパンジー部族と、『のんびりいこう』を選んだオラウンター部族と、『格好良く大きくいこう』を選んだゴリラ部族と、『しつこくどこまでも』を選んだ人部族があったが、『このままそのまま』を選んだ部族は猿族であった。 そして、1億年が過ぎて、はっきりしたのは、一番地球上で増えたのが人、次に猿、チンパンジー、オラウンターで、最も少ないのがゴリラになってしまった。 でも、ババによると、どんな動物も、増えて、いっぱいになると、それから先は減少しづけるというのである。 今後のゴリラはどうなるかというと、それは増えて、一杯になったので、あとは少なくなり、最後は消えていく。でも、そのゴリラは10分の一くらいの小さなゴリラになって、また増え続けると言った。大きくなって失敗したから、小さくなってまた出直しするそうだ。 チチの奥さんは三頭いる。正妻であるカカと、しっかりもののハハと、キュートなネネである。それぞれに、二頭から三頭に子がいる。特に、ホホが気に入っているのが、ネネの息子であるココである。ココは非常に好奇心が強く、すぐにホホのところに来ては、髪の毛を触ったり、持っている双眼鏡で、あちらこちらのぞき込んでは、でんぐり返って歓んでいた。 特に、ゴリラの家族においては、厳しい掟があった。ゴリラのオスが大きくなると、その家族から出て行かなくてはならない。もし、出て行かない場合は、ボスゴリラとその主権争いをしなくてはならない。 出て行ったオスゴリラは独りゴリラと呼ばれ、他の群れのメスを奪い取って新たな家族を作らなくてはならないのである。そのため、強いオスゴリラだけが生き延びるようになっている。ゴリラは一定の土地に落ち着くことはない。餌を求めて、常に移動して、生きているが、その移動範囲は限定されている。 ゴリラ家族同士が接近するときは、お互いに威嚇しあって、自分のテリトリーを守るようにさせているので、そう戦争はしない。独りゴリラが近寄ってきて、威嚇はするものの、メスがさらわれても、気にしない。むしろ、それを望んでいるかのような無関心をボスは示すのである。 ゴリラにとっての天敵は人類だけである。そして、チチの家族にも、その魔の手がせまってきていた。 |
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ホホはいつものように、リュックに弁当と水筒を入れ、双眼鏡とメモを手にして、チチのところにやってきた。 だが、いつもとは、違う。あちらこちらに血の後があった。ホホの心臓は破裂するかと思われた。まさか、と予感したが、それを想像することさえ、怖くてできなかった。だが、急がねばならない。守らねばならない。大切な家族を。 だが、そこにいたのは、血だるまになって、息絶えていたチチの姿である。 ホホは、全身の力が抜けてしまった。この世のすべてが終わったかのように、一瞬のうちに、天国であったところが地獄へと変身してしまった事実をそこにみてしまった。 あ、カカは? ペペは? ネネは? ・・・・一番大切なココはどこ? と探した。そこで、ホホが見たものは、小さな子供以外のすべての大人のゴリラはすべて惨殺されていたのである。 ほとんどが、銃で撃たれ、刀で、手足がもぎ取られていた。 ホホは人間をうらんだ。自分がその人間の独りであることさえ、憎んだ。一体神は何をしようとしているの?。愛と感謝の日々はどこにいったの? これが、その結末だというの、それはあんまりじゃあないの、神よ! ホホはクリスチャンではなかった。でも、そこで、始めて神の存在を肯定し、その神を呪ったのである。 そして、ホホは人間にもどり、ダンアン・フォッシーとして、鬼に変身したのである。 それは、後、市場で売られていたココたちを発見したからである。そして、そのゴリラの子供をどんな理由で買われるのかを、そこで知ったからでもある。 世界の富豪が、誕生日のプレゼントにゴリラの赤ちゃんを欲しがり、高く買い取っていたからである。もちろん、それは違法であった。また、世界の動物園でも、ゴリラの赤ちゃんは非常に高価な値段で取引されていたのである。 だが、野性のゴリラは特に神経質で、家族の中でないと、ものは食べず、そのまま餓死して死んでしまうことがほとんどであった。それにもかかわらず、一時でも、金にできればいいと思っている密猟者はアフリカにはたくさんいるのである。 また、どうして、密猟者は、子供のゴリラを捕獲するのに、大人のゴリラすべてを殺さねばならないのだろうか? これは、ゴリラの家族愛は強く、子供を守るためには、どんな親も、命がけで、戦い、けしてあきらめることはないからである。その習性のため、密猟者たちは、まず、大人のゴリラすべてを殺してから、ゆっくりと子供ゴリラを捕獲するのである。 ダイアンはなんとか、ゴリラの子供たちを取り返そうとしたが、それにはあまりにも大きな壁があった。莫大な金も必要だったが、それ以上に、どこに連れていかされたかが、わからなくなっていった。 そして、やっと出逢えたときには、死んでしまったあとの子供たちの姿だった。落胆したダイアンは、それから、ゴリラを守るべく、研究よりも、ゴリラの密猟者たちをとりしまることに、全生命がかけたのである。それはまさに、人への怒りとゴリラへの愛であった。そのやり方は、アメリカ人的になっていった。そして、現地のアフリカ人に、あまりにも、人よりもゴリラの偏愛が強すぎたために、反感をあびてしまった。 ダイアンは、その夜、寝付かれなかった。怒りと憎しみのために、心は少しも休めなかったからである。そのため、彼女はあびるほど強いウイスキーを飲んだ。そして、べッドで夢を見ていた。 チチとココがいる。いつもの、カカやネネもババもいる。何も変わらない平和な森があった。でも、ズドーンという音とともに、チチが倒れた。あわてて、近寄るホホは、その銃声の音の方を見た。カカの方に銃声を向けている。そこで、ホホは腕を拡げ、カカを隠す。そして、ひるんだ男に向かって、怒りの声をあげた。するといきなり後方から、ゴシンと頭を何かで打たれた。 そこで、目が覚めたのだが、正夢だったのである。そして、彼女の一生はそこで終わった。奇しくも、その夜は世界の子供たちが欲しいものをもらえるクリスマスイブだったのである。 |
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この事件は世界に大きな衝撃を与えた。絶滅の動物を救おうという運動が世界で広まっていった。だが、その運動も、何十年たっても、あまり効果がなかった。 彼女が亡くなってから、ゴリラの周辺諸国では大規模の人間が人間を大虐殺する戦争があった。 1994年、部族同志の争いで、たった四週間で50万人もの死者が出、そして戦後も、故郷へ帰れない200万人以上もの難民を生みましたルアンダ。また、内戦で約300万人が死んだと言われるコンゴ民主共和国(旧ザイール)がある。ダイアンがゴリラのチチに出会う前にも、ウガンダでもやはり大虐殺があったことも知られている。 その中で、一つの光があった。ダイアンが愛してやまなかったココが生きていたのである。それはアメリカに渡り、大きく成長し、手話を話し、理解するゴリラ,ココとして知られている。 ココの愛はやさしく、子猫をとくにかわいがっている。そして、その子猫を手話で、「私の愛」と呼ぶのである。 |
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のらり くらり |