夫婦(めおと)がつくもの

 夫婦釘・夫婦縞・夫婦茶碗・夫婦塚・夫婦雛
 夫婦星・夫婦松・夫婦窓・夫婦坂・夫婦船 

夫婦塚古墳(福岡県)


夫婦船の春秋
夫婦のことわざ

 「親子は一世、夫婦は二世、故郷は三世」

この諺は「親子一世、夫婦は二世、師(主従)は三世」であるが、現代の時代に合った諺に変更した。

 「夫婦は従兄弟ほど似る」
 「夫婦は合わせ物離れ物」
 「夫婦喧嘩と北風は夜凪(よなぎ)がする」


夫婦川柳

 フルムーン やっぱり喧嘩して帰り
 結局は 妻を頼りに生きていく
 我が家にも 鵜匠のようなひとがいる
 ヒマな日は 妻の小言が多くなり
 スイッチが増えて女が太りだす
 六十年炊いてる飯に出来不出来
 時として 石になりたいこともある
 腐れ縁 何度他人となったやら
 便利屋のような亭主に育てられ
 女房への電話は十円でも余り
 他人から見れば似たよな夫婦なり
 下取りも 潰しも効かぬ古亭主
 僕が入れ 妻がおろしてくるカード


女だって漁師

夫婦の歌詞が刻まれた碑

船頭小唄

俺はかわらの、枯れすすき、 おなじおまえも、枯れすすき
どおせ、二人はこの世では、 花の咲かない、枯れすすき


川の流れのように

知らず知らず 歩いてきた、細く長いこの道
振り返えれば 遥か遠く 故郷が見える
 でこぼこ道や 曲がりくねった道 地図さえない それもまた人生

いくつも時代は 過ぎて ああ 川の流れのように とめどなく
空は黄昏に 染まるだけ


喜びも悲しみも幾年月

おいら岬の 灯台守は 妻と2人で 沖行く船の
無事を祈って 灯をてらす 灯〜をてらす

沖縄の夫婦船の歌

1.この世は果てしなき 船旅のよう 夫婦の他に 頼れるものもなし
 (囃し)かなし みーとぅぶに 愛抱き 夫婦船

2.夫は帆柱 妻は船舵 どんな波風のときも一緒にこなす
 (囃し)かなし みーとぅぶに 愛抱き 夫婦船

3.船と帆柱は 世の風まかせ  極楽浄土の港に 着くまでは
 (囃し)かなし みーとぅぶに 愛抱き 夫婦船

4.心あわせて 走れ走れ夫婦船  その時がくるまで 漕ぎつづけよう
 (囃し)かなし みーとぅぶに 愛抱き 夫婦船

5.頼るな誰も 夫婦で何だ坂 日々に 運と微笑みを

 (囃し)かなし みーとぅぶに 愛抱き 夫婦船




夕べを行く夫婦船

 夫婦船

「おい、医者なんといったんや」

「あと、1ヶ月じゃと! うひゃあ、はっは!」

「なんで、こんな時に笑うんや」

「あのやぶ医者め、よくぞ、このあたしに向かって癌だとぬかしよった」

「そりゃあ、大変なことだがや」

「何も大変や、あらへん、とうちゃん、よけいな心配するなって」

「何いってんだあ、あと1ヶ月の命って医者に言われて心配しない亭主がどこにおるのや」

「馬鹿たれ、とうちゃんが心配して、どないなるとかや」

「どないなるもんやないが、心配するのが亭主たるもんやないか」

「だから、おまんは馬鹿たれや、ただ亭主ずらしとるだけやないか」

「わしは、かあちゃんに、いつも言おう言おうと思っちゃったが、おまえのその性格なんとかならんかな」

「ふん」

「おまえには悲しみって感情がないんや、あるのは笑うか怒るかだけやないか。人間なら、喜怒哀楽ちゅうって、最低4つはあるんやぞ。お前は最初の喜怒の二つしかあらへん。哀の悲しみときは笑うし、楽しいときには怒るだけやないか」

「だから、どなんしたんや。悲しみなど、とっくに海に捨ててしもたわい。楽しみは、いつも寝てから夢で味わっておるわい」

「だからな、それを、まだ生きておるうちに、人間らしい豊かな感情をな、その・・・とりもどしてほしいのや」

「とうちゃんな、うちたちはもういくつになったんやあ、二人とも70過ぎだぞ。年相応のことを考えやあ」

「そりゃあ、自分の性格を変えるにはとっくに遅いけんどな」

「そうやさかい、無駄なあがきはするもんやないがや」

「でもだ、あと1ヶ月の命あるうちにさ、わしの夢を叶えてくれや」

「とうちゃんな、やはり、おまえさんはあたしのことをちいとも心配しておらんよう。それをそう言えるのはあたしじゃあないのかい? 1ヶ月の命しかないのはあたしだろうが、おまえさんは違うがな」

「あ、ごめん、ごめん、でもな、おまえがいなくなったら、わしはなあ〜にもできんのや」

「だから、おまえさんはあたしのことを何の気も使っておらへんのや、自分のことばあっか考えとる」

「そやかった、そやかった、おまえの方が大変なんやな、確かにそうや、すまん、すまんなあ、かあちゃん」

「まあ、いいってことよ、おまえさんらしかな」


 もうすぐ港に着くころになった。


「今日の晩ご飯、何にすんだあ」

「そやな、サンマ焼こうかあ」

「それはいいやな、ちゃんと、だいこんおろしつけてや、あれないと、ちいともサンマの味がでんがな」

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

 しばらく二人の沈黙が夕闇に、そして波間に溶け込んでいく。

ちょっと考えこんでいたかあちゃんがその沈黙を破った。


「まっ、あの藪医者の言うことも本当かもしれんから、今ここでおまえさんに遺言しておくよ」

「縁起でもねえこというなや」


「・・・・、 やっぱ、今言っとく」

「・・・・・・」

「あたしの人生で一番幸せだったと思ったのはな、とうちゃんに出逢えたことや」


 エンジンの音が岸壁の家々にこだましていった。

 その音の合間をぬうように、静かな亭主の慟哭が聞こえてくる。

 二人の眼差しが合う。


 そして、止まった凪が終わり、スーと風がまた吹き始めた。
 今度はとうちゃんが考えこんで言った。


「かあちゃん、おまえがあの世さ行って、わしがこの世さ残されてな、どっちの方が辛いのかのう、おまえか、わしかあ?」


「まったく」

 かあちゃんは深いため息をついた。

「おまえさんの阿呆さかげんに、ようよう合わしていけるのはな、このあたししかおらんよ。とうちゃんの阿呆さかげんは犬でも食わぬって、昔から言うじゃろが」

「かあちゃん、それは違うぞ、確か、夫婦げんかは犬でも食わぬだぞ」

「そうだったかいな、たまには、あたしも間違えるってことがあるな。かあちゃんも筆の誤りって言うからな」

「それも違っとる。弘法も筆の誤りじゃい」

「とうちゃんは、一丁前に物知りじゃが、長く一緒に暮らした女房の心さえ、なあ〜にもわからんなあ」


「・・・・・???」


 港の岸辺から手を振る一人の少女がいた。きっと孫なのだろう。




2004.6.24

のらり くらり   
ホーム