具体案2
 ありがとう券から

 もういちど、姫ちゃんサンタさんの心にもどって、その具体案を出してみます。
 親子の間で発行されたありがとう通貨(姫ちゃんサンタ)
「肩たたき券  3分間」
「肩たたき券  5分間」

「洗濯干し券(ただし5時半まで)」
「洗濯物取り込み券(ただし5時半まで)」
「洗濯ものたたみ券 1週間分」

「掃除機・雑巾がけ券 2日分」
「皿洗い券 3日分」
「風呂そうじ券 5日分」

「何でも券」が10枚。

「いつもありがとう券 一生分」
姫ちゃんサンタはどうしてありがとう通貨を発行しようとしたのでしょうか?

 お母さんがいつも、自分のことを世話してくれたり、愛してくれることに対して、その感謝の気持ちを伝えたいためです。

 それは純粋な感謝の心を、言葉だけでなく、自分でできることを精一杯できる行動で示そうとしたのです。

 また、それは何もありがとう通貨を発行しなくても、不言実行のようにして、肩たたきしたり、掃除したりすれば、それで十分、その感謝の気持ちが伝わります。

 でも、不言実行しないで、ありがとう通貨を発行したのはどうしてでしょうか? それは、よくある子供の甘える姿から想像できます。

 甘えた子供には、不言実行がしにくいのです。お母さんから、

「姫ちゃん、お風呂を掃除してくれない」
「今、勉強で忙しいからできない、あとで」

 といって、いつしか、風呂掃除をしなくなります。

 お母さんはそんな姫ちゃんに対して、もっと強制力をもって、風呂掃除をやらせる必要がでてきます。

 でも、この親が子に対する強制力には、反抗心がつきものです。

 そこで、さらに反抗する娘に対して、強制力をもって、風呂掃除をさせようとすると、その結果は、親に反抗できない子供、親の言いなりの子供に育ってしまいます。

 しかも、親がいなければ、考えることも、自主的に動くこともできない甘えた大人になる危険性もでてきます。

 この姫ちゃんは自分から進んで、風呂掃除をしようとしています。その自主性を育てることが、もっとも大きなしつけであり、教育の原点ではないでしょうか。

 この姫ちゃんの自主性はまだお母さんの手助けが必要になります。お母さんの強制力がないと動けないのです。でも、怒られるような強制力は嫌です。悲しくなったり、反抗したくなるからです。そこで、お母さんから言われたことを納得してやれる自分にしたくなります。

 そこで、「約束をします」しかも、口約束ではなく、「文書できちんと契約します」。すると、その力はビジネスのような大きな力になります。

 それを、姫ちゃんは直感的に「自分で自分を発憤させたかった」のだと思うのです。そして、こころよくお母さんにしかられたかったのではないでしょうか。

 おこづかい制度

 子供達を親の手伝いをさせることでなんとか自立させようとする試みは、おこづかいをあげる姿にもあらわれています。

 うちでもそうですが、

「もし、皿洗いしたらおこづかいをあげます。でも、皿洗いしなかったら、おこづかいは一銭もあげません」
 
 という制度を導入します。この制度はいくらか有効ですが、子供達がおこづかいをほしいと思わないとあまり効果がありません。おこづかいがなくても、子供達は十分暮らしていけるからです。

 このおこづかい制度は今の現通貨制度によるものです。このおこづかい制度をもし貧民国でしたら、効果はすごいものでしょう。


 ありがとう通貨を発行しやすい環境をつくる


 姫ちゃんサンタのような自主性のあり、アイデアあふれるやさしい娘さんはめったにいません。そこで、姫ちゃんのように、親に対してありがとう通貨を発行しやすい環境を作れば、姫ちゃんのような子供達が育ってきます。

 そこで、もし、お母さんが皿洗いしているときに、
「姫ちゃん、今度、皿洗いするの手伝ってくれる」
「いいよ」
「本当、だったら、うれしい。約束してくれる」
「いいよ」
「そう、だったら、そのありがとう券に皿洗い何回分と書いて、姫ちゃんのサインをしてくれない。それが約束の証だから」

 そこで、お母さんはありがとう通貨の未記入の紙を姫ちゃんに渡すことができます。
 そして、姫ちゃんが発行したありがとう通貨をお母さんは受け取ることができます。

紙幣
 母から姫子サンタへ
発行された紙幣
姫子サンタから母へ

裏は時間通貨と共通

 そして、お母さんが姫ちゃんに皿洗いを頼みたいときに、
 この姫ちゃんの発行したありがとう通貨を差し出すのです。
「ほら、約束したでしょう。この分きちんとやってね」

 ということができます。

 でも、そのとき、姫ちゃんが病気でどうしても皿洗いができないときがあったとします。

そこで、お母さんは兄の一男に、

「お兄ちゃん、姫子に代わって皿洗いしてくれないかい」
「いいよ」
そして、
お母さんは一男に、姫子ありがとう通貨に裏書きサインして、渡します。
裏書きされて流通したありがとう通貨
母幸子から兄一男へ

 姫子の病気が治って、元気になりました。そこで、兄である一男は姫子に自分が代わりに皿洗いしたので、その分皿洗いするように言います。

 そこで、姫ちゃんサンタはこころよく皿洗いをします。


 そうして、姫ちゃんサンタは約束を実行できることになります。

 こういうことは普段よくありえることですが、親子兄弟が仲がよくなければ、できないことでもあるのです。それは逆にいえば、ありがとう通貨が流通することで、親子兄弟の中が仲良くなれる機会が増えるということにもなるのです。

 家族と国家
 このお母さんに当たるのが、国家の政府です。姫ちゃんと一男は国民になります。ありがとう通貨の未記入の紙を発行するのが政府や国連、またはNPO団体です。それらは親のように信頼され、世話できる組織でなくてはなりません。

 そして、ありがとう通貨を最初に記入発行する人は、小さな子供の姫ちゃんのように、「この世でもっとも小さき人、弱い立場の人」であることです。政府や国連、NPO団体に世話されないと生きていけない人たちです。
 病気や飢餓で苦しむ人、人権を阻害された人、障害がある人たちのような人たちです。

 兄の一男に当たる人がいわば一般人というもので、五体満足、健常者、人間として扱われる人たちです。その人たちが弱い立場の人を助ける役目をすることになります。

 家族で発行するありがとう通貨
 ありがとう通貨のデザインはいろいろな動物や草花や風景や、また、家族写真を主にしたもので作ると、もっと親しみがあふれたものになります。

 具体的内容がポイント

 こうした家族で発行されるありがとう通貨は、
 
「肩たたき券  3分間」
「肩たたき券  5分間」

「洗濯干し券(ただし5時半まで)」
「洗濯物取り込み券(ただし5時半まで)」
「洗濯ものたたみ券 1週間分」

「掃除機・雑巾がけ券 2日分」
「皿洗い券 3日分」
「風呂そうじ券 5日分」

 のように、具体的内容を書いたものの方が単に時間だけというよりも効果的であり、そのアイデアの楽しささらに、行動しやすい内容になります。


 現通貨において、目的税といわれるものがそうです。ガソリン税が道路に使われことを容易にするように、人々は目的の内容にあった時間を使うのが、よりはっきりして、納得して使えるものだからです。

 それは、「人はなんのために生きるのか?」という問いにもなるのです。ただ生きるためだけでは納得いかないのが、人間です。人間らしく生きるためには、そこに共通目的があることが必要です。それが仕事です。

 私たちはお金だけで働くことはしません。お金プラスアルファです。そこに生き甲斐がないと働けないのです。また、はっきりしていない目標に対してはあいまいな行動になってしまいます。しっかりと目標に向かっていくときに、自分の生き方に力がでます。また、共同で生きるときには、同じ目的が必要になります。

 その目的にあたいするものが、「仕事内容」です。

 例えば、単に命の交換だけであったら、もし、「泥棒すること」と「荷物を運ぶこと」の命の交換はできます。でも、それは人として、交換したくない時間です。人の喜ばれる時間を交換したいものです。そのため、「泥棒すること」のような悪行の内容をさせないことや、喜ばれるような荷物を運ぶ善行の内容に規制する意味でも、内容を書いた方がより効果的になります。

また、目的税のように、お金の交換も規制して、その正常な経済活動をさせるように、

「掃除1時間というありがとう通貨」と、「3000円という現通貨」は交換できなくすることもできます。
 ありがとう通貨掃除1時間は同じ掃除1時間しか交換できないようにすることで、掃除の仕事を増やして、さらに家をきれいにする(目的)ことがより効果的になります。

 姫子サンタさんの発想から

「何でも券」が10枚。

「いつもありがとう券 一生分」

 「なんでも券」というのは、今の現通貨です。なんでも買えるような便利さがあり、選択の自由があります。時間通貨のありがとう通貨も、「どんな仕事も交換できる自由さ」がありますので、とても便利になります。

 ただ、現通貨ではプレゼントしにくいので、商品券という形をとると、心がこもったものになります。それはどうしてでしょうか?

 そこで、プレゼントの種類で、人はどのような心情になるかを想像します。

1.現金・・・事務的・とてもありがたい・なんでも使える
2.商品券・・・いつでも使えて便利、ちょっと規制されるので不便、必要があったらありがたい
3.お歳暮・・・いつも気にかけてくれてうれしい・内容によっては便利と不便がはっきり
4.手紙・ハガキ・・・心がつながっていてうれしい・便利不便とは無関係
5.言葉・挨拶・・・何かほっとする、一体感がでる


@の現金に当たるものが、姫ちゃんサンタの「なんでも券」で、とても便利なものです。内容を限定しないので、選択が広がります。

Aの商品券に当たるものが、姫ちゃんサンタの「肩たたき、掃除、洗濯、皿洗い券」です。

Bのお歳暮に当たるものが、実際に、姫ちゃんが「肩たたき、掃除、洗濯、皿洗い」をしたときです。

CとDの手紙・ハガキ・言葉・挨拶に当たるのが、 「いつもありがとう券 一生分」です。


 これらを一つ選択することは日常生活はうまくいくことができません。みなそれぞれの場合に合わせて、選択できてこと、これらが生かされています。

 そのため、ありがとう通貨も、現通貨と合わせて選択できることが大事であり、また、場合に応じて、時間通貨のありがとう通貨の発行とあわせて、内容通貨のありがとう通貨を発行することで、日常生活の心をもっと豊かにすることが可能になります。

 とくに、姫ちゃんサンタのもっとも大きな心は

「いつもありがとう券 一生分」
 
 です。これは、ありがとう通貨においては、手形の発行をするアイデアに結ぶことができます。

 姫ちゃんサンタは、国や母が発行するようなありがとう通貨手形の心の基盤をつくっています。

 それが、手形の発行時間総数を表しているといえるでしょう。それが残された命の時間=一生 であり、その感謝を誰にあげるかというのが、ありがとう通貨の発行と流通目的になるのです。

 子供サンタクロースの日

 毎年、クリスマスが近づくと、子供達へのクリスマスプレゼントに何をあげようかと迷います。しかも、子供が中学生になってくると、ほとんど親がほしいものを用意してあるので、特別ほしいものがないようで、結局お金か図書券かになってしまうこともあります。

 そこで、今年のクリスマスプレゼントを何にするかと考えたら、姫ちゃんサンタさんのように、ありがとう通貨を発行しようかと思ったのですが、親が子にありがとう通貨をプレゼントするのはどうも似合いません。

 というのは、親が子にする行為はたくさんありすぎて、掃除・洗濯・料理など、ほぼ毎日子供達にしていることであって、そうしたありがとう通貨をあげる方が、むしろわずらわしくなって大変になります。

 でも、なんとか、子供がよろこびそうなありがとう通貨の内容を考えたら、「宿題手伝い」「勉強を教える」「一緒に遊ぶ」というような内容しかありませんでした。

 それにしても、そういう内容を子供達がそれを望むかというと、そうでもありません。ありがとう通貨をもらってうれしいのは、子供ではなく、親の方です。子供からサンタクロースのように、欲しいものをもらえるとしてら、大きな金額であり、車とか家とか、趣味の道具とかいうのであって、とても子供達が親にあげられるような品物ではありません。

  また、小遣いをためて、ネクタイや服をかって親にプレゼントするにしても、親はそのものがほしくて感動するのではなく、子供達が親からもらった小遣いをためてまで、親にプレゼントしたいという気持ちがうれしいのです。そのモノではなく、そのモノをあげるココロなのです。

 大人たちの間で行われる儀礼で、お歳暮やお中元がありますが、これはモノをあげ、モノで返すという行為を通じて、日頃の感謝を表すものです。このモノで一番うれしいのは、くれたモノ・あげたモノが、本人にとって、ほんとうにほしかったモノであったときです。

 でも、ほとんどの場合は、ほんとうのほしいモノになることはありません。私たちが子供のほしいモノをキャッチすることが難しいように、友人や知人が求めるモノをキャッチするのはもっとむずかしいからです。

 そこで、一番うれしく、とても便利なモノはお金になってしまいますが、それではココロがありません。何か事務的であり、逆につまらない贈り物になってしまいます。そこで、商品券が登場しました。しかも、限りなく、お金のような自由さがあるような選べる商品券が求められます。

 そこで、常に矛盾した迷いが生じます。お金が一番喜ばれることは確かだが、お金だと相手に失礼にあたる。モノだと相手にとっては喜ばれない。相手がどんなモノがいいのかわからない。いったい、何をあげたらいいのだろうか?

 今の日本ではモノや金のプレゼントでは満足できない時代になってきています。ココロの日本になってきたのです。

 そこで、その解決策は、ありがとう通貨にあると思えたのです。

 モノに対してはココロで返す
 お金に対してはありがとう通貨で返す


 親が、小さな子供におもちゃや人形をプレゼントするのはとても喜ばれます。でも、それに対して、子供から親にプレゼントされるもので、もっともうれしいものは、姫ちゃんサンタさんのような「ありがとう券」「ありがとう通貨」ではないでしょうか。

 姫ちゃんサンタのおかあさんが、実際はもらわなかったけれど、隠してあった、姫ちゃんのココロを知ってとても感動したのは、それがとてもうれしかったことです。

 子供達が小学校の卒業式で親に対して「ありがとう」という言葉とともに、「感謝状」をわたしてくれるのは涙が出るほどうれしいものです。

 また、子供が大きくなって、親に花束を贈呈し、「今まで育ててくれてありがとう」という言葉だけで、とめどめもなくうれしい気持ちになれます。その場合、花がほしいのではなく、そのありがとうの言葉がほしいのです。花はどうでもいい飾りにすぎません。でも、その「ありがとうの言葉」にふさわしいモノとしては、花束が一番似合っているのです。

 そこで提案なのですが、

 日本のクリスマスは、親サンタクロースが子供の好きなモノをプレゼントするのに対して、子供サンタクロースは親の手伝いをするココロのプレゼントで返す日にしたらどうだろうか。

 もちろん、バレンタインディのように、お返しのホワイトデェイのように一ヶ月後にしてもいい、1月25日を子供サンタクロースの日にしてもいいではないだろうか。

 または、特別子供が親に感謝を示して、ありがとう通貨を捧げる日をもうける。例えば、勤労感謝の日である11月23日はどうだろうか?


 参考:
 勤労感謝の日というのは、昔は新嘗祭(にいなめさい)って言って、古くから国家の重要な行事であり「瑞穂の国」の祭祀を司る最高責任者である大王〔おおきみ〕(天皇)が国民を代表して、農作物の恵みに感謝する式典でした。「新嘗」とはその年収穫された新しい穀物のことをいいます。農業中心の時代、この行事はとても重要な儀式でした。
 日本は農業国から工業国になったために、サラリーマンが国を支えることになり、それで勤労感謝の日という名に変えたのでしょう。これからの時代は、工業国からサービス国になってきたので、それをありがとうの心の日にすればいいかもしれません。 そして、その行事として、ありがとう通貨の発行や流通を促進したりしたらいいと思うのです。

 


 こうした、子供サンタクロースの日などを儲けることによって、お中元やお歳暮に対しても、モノに対して、ココロで返す儀礼があたりまえになったら、もっとココロの時代が大きく広がってきます。

 お歳暮にはありがとう通貨で返すのです

 例えば、日頃からお世話になっている近所の知人には

また、相手が一人暮らしの老人だったとします。すると、その老人にあげるありがとう通貨の内容は、

 私たちのココロはどこにあるかというと、この世でもっとも小さなモノたちにもっとも多く隠されています。そのココロの扉を開けることが、新しい日本のココロの時代を築くことができるのではないでしょうか?

 モノにはココロを返す

 これは、戦争でも同じでしょう。

 弾丸には弾丸ではなく、悲しみのココロを返すのが効果的でしょう。

 ココロはモノよりも、行為に多く隠されています。