ありがとう通貨の流通2


1.どうにもこうにも流通が難しい


 いろいろなアイデアを出して、時間通貨を流通させようとするが、それがどれも一般に受け入れないアイデアになってしまう。

 時間通貨そのものの理解がピンとこないからだ。また、たとえ、それが理解されたとしても、誰に対して使うかというと、非常に親しい者に対してしか使えない状況になってしまう。

 また、親しい者同士であっても、あえて、時間通貨なんかをやりとりするのさえ、面倒なもので、むしろ、そんなことはしない方がはるかに行動的になれるように感じるからだ。

 そして、「何のために?」という疑問がすぐにわいてきてしまう。

 地域通貨を何度もチャレンジしても、結局、それが流通していかないで、断念せざる状況になるのは予想できる。そして、結局は、お金のやりとりに落ち着くようになってしまう。

 どうして、時間通貨や地域通貨は流通しにくいのだろうか? 

 その原因としては、人は平等を好まないということだろうと思われる。平等は理想だけれど、それは理念だけで、人が好むのは不平等だと思われる。人が好むスポーツやギャンブルなどには、それがよく表れている。人は能力の能力を戦わせて、その能力をあげていくことを好むからだ。そうしないと、生きているおもしろさや、生き甲斐というものがなくなってしまうからだ。

 そこで、時間通貨の使命は平等を楽しむような策を作ればいいのだが、平等そのものはあたりまえのことなので、楽しむことはなかなかできないのが実状だ。苦楽は不平等につきものだからだ。

 時間通貨・ありがとう通貨を流通させようとするところに無理があるように感じる。むしろ、何もしない方が人の心がスムーズに交流していくようにさえ思える。

 そして、心の流通だったら、通貨よりも、言葉を大事にする流通の方に力を入れた方がいいのではなかろうか。例えば、挨拶の一言一言に、日常会話に素敵な言葉をはやらした方が効果的に思える。

 ありがとう通貨を素敵な言葉の流通に変えていく方がいいのかもしれない。つい、ありがとうと言いたくなる言葉を探していった方がいいように思う。

 そして、言葉の流通から自然と、お金をもっている人がない人に流れていくような状況を作り出せばいいように感じる。

2.何がありがとう通貨・時間通貨の流通を阻むのか?

 地域通貨が発展しない理由として、それが一部の地域や会員同士でしか通用しないためかと思っていた。それが原因だったら、地域や会員制をとっぱらった世界共通の時間通貨を作ればいいと思い、世界の時間通貨としてありがとう通貨の発想をしてきた。

 だが、実際にそれを流通させようとしたが、すぐに人の心の傷害につきあたってしまう。理解されにくいし、また、たとえ理解しても、それを率先して実行する気になれない人がほとんどだ。

 そこで、ありがとう通貨が流通しない原因として、人の心が「平等を求めない」ことが、もっと大きなものであると感じてきた。

 人は不平等を求めるのが自然の心だ。

 と理解できてきたのです。時間通貨は基本的に平等原則からなっており、命の時間を交換しあうものである。だが、人は命の交換をしたがらないという結果を見せつけられた。

 例えば、同じ体力をもっている二人の労働する1時間で、片方が一生懸命に働いた1時間と、もう片方が不真面目にいいかげんに働いた1時間を交換したがるだろうか?

 この交換は否である。動物の命そのものの性質からして、自由な動きが特徴だ。そして、自分は自分他人は他人として、自由に動けることをもっとも好む生き物ではないだろうか。仕事でも、他と差別化することで、生きる力をつけていく。他人よりももっと頑張って、つよくなろうとするのが、人間らしさではなかろうか。

 そこで、時間通貨の原点「命の時間を交換しあう」ことが、はたして本当にできることなのだろうかという疑問がでてきた。

 「自分の命の時間と他人の命の時間の交換はできない」という逆の原理が真実ではないだろうか。
これが真実ならば、「時間通貨は流通できない」という結論が導くことができる。

 これは端的に言うと、心の交換はできないということである。心の交流はモノや金の交換のような形にはできないということだ。通貨はモノの交換だけに通用するもので、ココロや時間の交換はできないというのが本当のところではなかろうか。

 人が助け合う道は、お金かボランティアか、そのどちらか、または両方で、その他の道は実際的にはないということではなからうか。

 その他の道で、ココロの道があるとすると、それは言葉(音楽などの文化も含む)の力だけではないだろうか。

 多くの地域通貨の共通原則が、「地域通貨と現通貨は交換できない」ということだが、それはさらに地域通貨の流通を阻んでしまっているように思える。そのため最終的にもっと流通させるために、現通貨との交換ができるような形に変化せざるをえなくなってしまう。クーポン券とかポイント券のような割引する形の利用に変化してしまう。そうなると、地域通貨や時間通貨の本来の道からはずれてしまうので、地域通貨とは関係なしの「ブルーチップ」のような会社で十分になる。ものが安く買える、おまけが付く、お客を増やすことができるというような制度がとってかわるか、エコカードのように、環境に配慮したことをすると、モノを安く買えるようになることで、協力する制度をつくっていく。

 多くの地域通貨が流れていった道をさぐっていくと、時間通貨は流通できないで、お金とお金に準じるモノでしか、流通できないという結果になるように思える。

 世界の時間通貨を1年間にわたって、その原理を模索してきた。その根本にあったものは、一人一人の命の時間を交換するというものであったが、その根本になった「命の時間の交換」の前提が、実際の活動において、崩れ去ったという結果がでた。そして、えた結論はその前提とは逆の、「一人一人の命の時間は交換できない」というものになった。

 そのため、世界の時間通貨・「ありがとう通貨」の案は廃案にしようと思う。人が助け合うシステムは三つある。金かボランティアか言葉かであろう。


3.新ありがとう通貨案

 1年にわたって考案し、試行した結果、時間通貨というものが流通しにくい人の心があることがわかってきました。そこで、時間通貨という案を廃案し、別にもっと流通しやすい通貨案を考えることにしました。

 お金による現通貨はまことに流通しやすいものです。そこで、お金に替わるような、しかも、今まで考えてきた愛の通貨のシステムに変更できる案を生み出せばいいのです。

 そこで、お金をもっていなくても、それがお金のかわりとして使えるものとして、「約束手形」に焦点を絞ってみました。

 いわゆる借金です。世界の後進国や発展途上国において、先進国の援助はかかせないものです。でも、お金がありません。そこで、先進国から借金することで、発展をうながすことができます。

 この後進国の借金をするシステムをありがとう通貨に利用できるのではないでしょうか。

 ある設定をします。、


 もし、一銭もお金がなくなったら、どう生きていったらいいでしょうか?

まずは食べ物と宿です。そこで、レストランに入って、こう聞きます。

「お金がないのですが、食べた分を借金することができますか?」

 と聞きます。

「きちんと返してくれますか?」
「はい、手形(ありがとう通貨手形)を発行しますのでいかがでしょうか?」
「それはどんな手形ですか?」
「国の福祉機関が発行した手形ですので、そこで現金化ができるものです」
「そんな面倒なことをしなくてはならないのですか」
「面倒でしたら、あとで、私がかわって現金化してお渡しします」


 このようなありがとう通貨手形があったらいいでしょう。そして、国に福祉機関は、手形がどんなものに使われたかがはっきりわかるものに対してだけ、現金で支払うことにすれば、悪事で使われる手形を防止する役目ができます。


 最初の案であった、「姫ちゃんサンタ」の場合はどうでしょうか?


8歳の姫ちゃん

「お母さんいつもありがとう。今度はお母さんのお手伝いするね。明日の皿洗い、私がするよ」
「ほんとう、うれしいな。でも本当に明日の皿洗いをしてくれると約束してくれる」
「いいよ。その約束手形(ありがとう通貨)を出すよ。普通、業者に頼んだらいくらになるの?」
「そうだなあ、時給1000円として、皿洗いは10分以内でできるから、100円くらいかな」
「だったら、皿洗い100円のありがとう券を発行すればいいでしょう」
「そうね。でも、もし、姫ちゃんが皿洗いしなかったら、その100円券は現金になるのかな?」
「なるなる。だって、お母さんは毎月500円のおこづかいをくれるでしょう。そのおこづかいから、100円引いてくれればいいから」

 新ありがとう通貨手形案は、最初にお金を出すのではなく、生きるにあたって、正当なまた愛のある行為に対してだけお金を出すという方式に変換するものになるのです。


 お金も税金も、それが何にでも変換できてしまうため、とても便利なシステムのため、暴走しやすいものです。そこで、生きる上で最小限に必要なモノだけに流通するお金のシステムにすれば、もっと、社会は心やさしい社会に変貌することができます。

 今環境問題もそうです。そのときに必要なものだけを生産するようにしていけば、地球を破壊しなくなってきます。そうした必要最小限のお金の使い方にもっていくための方法になれば、環境にも社会にもやさしいお金の使い方ができるようになってくるでしょう。

 科学が核爆弾を作ったのが悪いのではありません。それを戦争に使うことが悪いので人間の倫理が落ちたためです。科学の使い方で世界は地球の破滅にも地球の全盛にもなります。

 それと同じように、お金の使い方で、世界の格差拡大になるかならないかが決まってきます。そのお金の使い方に新しい提案をすることで、もっと、世界はやさしく愛に包まれた世界になれると思うのです。