12.この世で最も小さき者のために


マタイによる福音書 25章14〜28節

1.タラント(貨幣)の精算

「天の国はまた次のようにたとえられる。ある人が旅行に出かけるとき、僕たちを呼んで、自分の財産を預けた。 それぞれの力に応じて、一人には五タラント、一人には二タラント、もう一人には一タラントを預けて旅に出かけた。

 早速、五タラント預かった者は出て行き、それで商売をして、ほかに五タラントをもうけた。

 同じように、二タラント預かった者も、ほかに二タラントンをもうけた。

 しかし、一タラント預かった者は、出て行って穴を掘り、主人の金を隠しておいた。

 さて、かなり日がたってから、僕たちの主人が帰って来て、彼らと清算を始めた。

 まず、五タラント預かった者が進み出て、ほかの五タラントを差し出して言った。

 『御主人様、五タラントお預けになりましたが、御覧ください。ほかに五タラントもうけました。』

 主人は言った。『忠実な良い僕だ。よくやった。お前は少しのものに忠実であったから、多くのものを管理させよう。主人と一緒に喜んでくれ。』

 次に、二タラント預かった者も進み出て言った。

 『御主人様、二タラントお預けになりましたが、御覧ください。ほかに二タラントもうけました。』

 主人は言った。『忠実な良い僕だ。よくやった。お前は少しのものに忠実であったから、多くのものを管理させよう。主人と一緒に喜んでくれ。』

 ところで、一タラント預かった者も進み出て言った。

 『御主人様、あなたは蒔かない所から刈り取り、散らさない所からかき集められる厳しい方だと知っていましたので、恐ろしくなり、出かけて行って、あなたのタラントを地の中に隠しておきました。御覧ください。これがあなたのお金です。』

 主人は答えた。

 『怠け者の悪い僕だ。わたしが蒔かない所から刈り取り、散らさない所からかき集めることを知っていたのか。それなら、わたしの金を銀行に入れておくべきであった。そうしておけば、帰って来たとき、利息付きで返してもらえたのに。

 さあ、そのタラントンをこの男から取り上げて、十タラント持っている者に与えよ。

 だれでも持っている人は更に与えられて豊かになるが、持っていない人は持っているものまでも取り上げられる。 この役に立たない僕を外の暗闇に追い出せ。そこで泣きわめいて歯ぎしりするだろう。』」


2.天の裁き


 「人の子は、栄光に輝いて天使たちを皆従えて来るとき、その栄光の座に着く。 そして、すべての国の民がその前に集められると、羊飼いが羊と山羊を分けるように、彼らをより分け、羊を右に、山羊を左に置く。

 そこで、王は右側にいる人たちに言う。

 『さあ、わたしの父に祝福された人たち、天地創造の時からお前たちのために用意されている国を受け継ぎなさい。お前たちは、わたしが飢えていたときに食べさせ、のどが渇いていたときに飲ませ、旅をしていたときに宿を貸し、 裸のときに着せ、病気のときに見舞い、牢にいたときに訪ねてくれたからだ。』

 すると、正しい人たちが王に答える。

 『主よ、いつわたしたちは、飢えておられるのを見て食べ物を差し上げ、のどが渇いておられるのを見て飲み物を差し上げたでしょうか。 いつ、旅をしておられるのを見てお宿を貸し、裸でおられるのを見てお着せしたでしょうか。 いつ、病気をなさったり、牢におられたりするのを見て、お訪ねしたでしょうか。』

 そこで、王は答える。

 『はっきり言っておく。わたしの兄弟であるこの最も小さい者の一人にしたのは、わたしにしてくれたことなのである。』

 それから、王は左側にいる人たちにも言う。

 『呪われた者ども、わたしから離れ去り、悪魔とその手下のために用意してある永遠の火に入れ。 お前たちは、わたしが飢えていたときに食べさせず、のどが渇いたときに飲ませず、旅をしていたときに宿を貸さず、裸のときに着せず、病気のとき、牢にいたときに、訪ねてくれなかったからだ。』

 すると、彼らも答える。

 『主よ、いつわたしたちは、あなたが飢えたり、渇いたり、旅をしたり、裸であったり、病気であったり、牢におられたりするのを見て、お世話をしなかったでしょうか。』

 そこで、王は答える。

 『はっきり言っておく。この最も小さい者の一人にしなかったのは、わたしにしてくれなかったことなのである。』

 こうして、この者どもは永遠の罰を受け、正しい人たちは永遠の命にあずかるのである。」


解説:1タラントは6000デナリになり、1デナリは、当時の一日の労賃に値するもの。1日1万円の賃金だとすると、5タラントの人は、3億円の財産を預けられ、2タラントの人は1億2千万円、1タラントの人は6千万円預けられたことになります。
参考解説資料:ロゴスミニストーリー
 マザーテレサの祈り


苦しんでおられるイエズスよ、今日も、またこれからも毎日、病人たちの中にあなたを見ることができますように。

 また、病人たちを世話することがあなたの役に立つことになりますように。

 病人たちの怒りや悪い行ない、屁理屈などにかくされたあなたを私が見分けることが出来、「苦しんでおられるイエズスよ、あなたの役に立つことは何て快いことでしょう」と言えますように。


 

 聖書のマタイによる福音書の25章と、マザーテレサの祈りには、現貨幣の原理と、ありがとう通貨の方向性がよく表されています。

 @のタラントの清算は、現貨幣における、投資をすることによって、利潤を大きくすることが豊かさになるという意味であり、もし、投資も、預ける(銀行預金)こともしないで、そのままにして、隠しておくと、意味がないばかりか、貧しくなるということを示しています。

 それが、しいては、「金を生かす者には、さらに金が集まり、金を生かさない者は持っている金さえも、金を生かす者にもっていかれて、それを失うといっています。そうして、世界が100人の村だったらのようんな、格差が激しい世界が生まれてくるという意味でしょう。

 そうなった場合、
Aの天の裁きが待っていることになります。その格差を助長するような行為をすると、天国ではなく、地獄が待っているということも示しています。

 そこで、もし、格差をなくすような行為をすると天国がまっているということにもなります。

 これをまとめてみれば、

 金を生かすことは大事だけれど、それにこだわって、人の命を生かすことを忘れてしまうと、人類は破滅してしまうという意味だともとれます。


 そこで、ありがとう通貨は、人の命をどう生かしていくかの方向を模索しています。先のありがとう通貨を発行流通させるためには、「この世の最も小さき者」に委託・配分する必要が出てきます。

 でも、ありがとう通貨は基本的に、自分で自分のありがとう通貨を発行するものです。それは、生きている間、他の人に向かって、「私はあなたたちのために働きます」と約束するようなものだからです。自分が働くという約束手形を世界に流通させて、世界の格差をなくしていこうという狙いがそこにあります。

 もし、世界中の人間がお金を自分で発行できたら、お金は流通するでしょうか? それは意味ないことになります。 ありがとう通貨もまた世界中の人がいつでも自由に発行できたら、名刺交換または、仲間同士の交換というだけになってしまうでしょう。

「私はあなたのために働きます。よろしく」
「はい、私もあなたのために働きますので、よろしく」

 という名刺交換になります。そして、特別な関係の間だけで、成り立つ共同社会になってきます。それが、現在の地域通貨の世界ではないでしょうか。または、家族だけに一時でも流通するありがとう券になってしまいます。

 現貨幣が世界に自由に流通するためには、「お金が欲しい」という気持ちが増える必要があります。LOVE OF MONEY (貨幣愛)が、投資する力や働く力を引き出すからです。

 私たちが最も強い力というのは、人が生きようとする欲求ではないでしょうか。生きるために、衣食住を、さらに、よりよく生きようとするために、心を充実させようとします。

 そのように、生きようとする欲求がありがとう通貨にもないと、それは流通しないでしょう。この生きようとする欲求の頂点にたつのが、宗教における神のような存在です。キリスト教ではイエスという人物を神の象徴にさせています。

 さらに、最も生きようとする欲求の強いものは誰かというと、「この世でもっとも小さき者」だと思えるのです。マザーテレサが表現したように、見捨てられた者、病に苦しむ者、死に行く者の心の内に共通して宿る強く生きる欲求です。
 
 そして、マザーテレサの創立した「神の愛の宣教者会」のように、格差社会が拡がった世界では、「この世で最も小さき者」のために奉仕することが、この世で天国に一番近い仕事になってきます。

 ただ、この小さき団体だけではとても大きな力にはなりえません。このようなことを各国が精一杯努力しようとしています。また国連でもそうです。それでも、格差社会が是正されるには、まだまだ時間がたくさんかかってきています。

 そうした力をさらに大きくしていく方法を世界は模索しています。そうしないと、天の裁きのように、調和がとてた人間社会ではなく、格差が広がって、アンバラスな社会における自爆、崩壊という地獄がまっているからです。

 そこで、一つの案が生まれます。

 国連や国が、この世の最も小さき者たちの命を保証する「ありがとう通貨」を彼らにまず発行することです。そして、この世の最も大きな者たちであり、現通貨をたくさんもっている金持ちには発行しないことです。

 そのことによって、ありがとう通貨が使えるのは、国や国連が発行し、保証したものだけに限定されます。そうした限定をすることで、「ありがとう通貨愛」が生まれるでしょう。そして、その愛は、マザーテレサが「この世で最も小さき者」の内に生きている「イエス(神)」に奉仕することをなによりも幸福と感じた愛が生まれることになります。

 そのため、ありがとう通貨は「この世で最も小さき者の命を守るために発行された通貨」だということにもなりえるのです。


 これは、先に、姫ちゃんサンタが、家族の中で一番小さき者である姫ちゃんがありがとう券を発行したから、大きな意味があり、それが世界の貴重な財産になってくることを示しています。

 もし、ありがとう券をお母さんが発行したら、姫ちゃんは何もしてもお母さんにそのありがとう券を出すようにしなくてはなりません。それだと、お母さんも姫ちゃんも、そのありがとう券を使うことが嫌になってしまうでしょう。