経済学勉強ノート

お金の崩壊

青木秀和著

集英社新書
 ゲゼル研究会の講演会で、ドルの崩壊について話された。

 その話を聞いてさらに本を読んでみたくなった。
現在の日本とアメリカの国債高

アメリカの国債は特に2008年3月2.5兆ドルであったものから、12月には10.6兆ドルと、9ヶ月で、4.2倍に跳ね上がっている。

さらに、2008年9月に日本が引受先トップだったものが中国がとって変わりトップになった。
日本の現在の国債高

アメリカの現在の国債高

アメリカの国債の引き受け国
 お金の崩壊のあらすじ

1,中央銀行制度

今の世界の金融システムはイギリスの中央銀行イングランド銀行設立から始まった。

1694年政府の債務を引き受ける代わりに、イングランド銀行券という「金」との交換を保証する兌換紙幣を英国政府に渡したことが始まりであった。

 それは戦争を継続、拡大するための経済界の応援とその金利と手数料で国から大もうけしようとして設立された銀行だった。

 現在の中央銀行システム

 国債の市中消化の原則

 中央銀行がいったん国債の引受けによって政府への資金供与を始めると、その国の政府の財政節度を失わせ、ひいては中央銀行通貨の増発に歯止めが掛らなくなり、悪性のインフレーションを引き起こすおそれがあるからです。そうなると、その国の通貨や経済運営そのものに対する国内外からの信頼も失われてしまいます。これは長い歴史から得られた貴重な経験であり、わが国だけでなく先進各国で中央銀行による国債引受けが制度的に禁止されているのもこのためです。
財政法 5条

第5条 すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。
 中央銀行システムは借金を借金で返すという無限の繰り返しにより、それが膨大になり、最後は必ず破産してしまうシステムであり、それに拍車をかけたのが金利と信用取引であり、それを維持させるのは国債の増大しか道がないシステムだからである。
この借金地獄はサラ金で多重債務に陥って、最後は破産宣告をするしか生きる道がない状態になったのと同じである。
 国債だけでなく、地方債もまた同じであり、破綻した夕張市のように、各地方また国、しいては、世界をリードしてきたアメリカ自体が破産する危機になったのが現在である。
 昨日、アメリカは公定歩合引き下げを日本よりも低い0.25%にした。ゼロ金利政策である。しかし、その政策は遅すぎた感がする。
 こうした借金システム自体を改めない限り、この崩壊からは脱出する道はない。過去、日本は明治維新と第二次大戦後に、借金をチャラにして、国を立て直したようにしないと、無理であろう。でも、たとえ、そうして、一時立て直したとしても、数十年後にはまた同じ金融経済危機がやってくることは自明の理である。


2,すべては国民の貯金を元手に赤字補填されている

 国民の貯金である「郵便貯金」「銀行預金」「簡易保険」「生命保険」「損害保険」「厚生年金」「国民年金」を元手に政府は国債地方債を発行し、さらに、日本の国債はアメリカの国債を買うために使われる。いわば、日本の政府のみならずアメリカ政府の財政赤字を補うために使われ、果ては、貯金を守ると称して、その貯金箱(銀行など)自体にも使われてしまい、今はスッカラカンになってしまっている状態である。

総務省白書  財務省

 そうした公的借金を返すのは国民の税金である。国債が834兆円、地方債が201兆円 合計1001兆円(ダブルカウン34兆円を引くと)、で、積み上げると、高さ1万10キロメートル、重さ10万100トンになる。
 それを総人口1億2千万で割り、4人家族の家計で計算すると、1家族あたり、3千337万円の借金返済を迫られ、それを税金で返済要求されていることになる。

*1万円札厚さ0.1ミリ、重さ1グラムなので、100万円で1センチ、重さ100グラム、1億円で、1メートル、10キログラム

 個人の金融資産は約1400兆円なので、7割が、国債と地方債の借金である。

 しかし、同時に、その返済先は同じ国民なので、家計の7割が、債務であり債権でもあるということになる。
 そのため、国債や地方債がどんなに増えようとその貸し主が同じ国民であるために、破産はけしてしないことになる。しかし、それは国民が経済的平等であったならばの話である。
 もし、国民の経済的格差が激しくなった場合は国民の中の金持ちがすべての権力と富をにぎり、貧乏人はさらに貧しくなる。そうした場合、借金する方が返済ができなくなり、借金→貸し金→借金のサイクルは停滞し、経済不況に陥ることになる。
3,過去3度の国債を反故にした歴史がある。

 江戸時代:
 ・貨幣改鋳・・・小判の金含有量を減らして、赤字補填した。貨幣の価値を減らして通貨量を増やすインフレ政策
 ・複数本位制・・米・金・銀により、米の輸送から金貸しになった札差し、小判を少額貨幣にして手数料をとる両替商が武家に金貸しになっていく。また、大名は家来から俸禄を借り上げる「知行借上」、藩しか通用しない藩札の発行(地域通貨)で、その場その場をしのいでいた。

 「償還を装った破産」そのものだった。

 明治時代:
 ・江戸幕府の債務全額引き受け、旧藩の累積債務は対外債務の70%、藩札の59%、藩債の42%だけ引き受け、それ以外は切り捨てた。維新直後、貨幣経済は混乱し、各藩が残した藩札は1694種類に及んで流通していた。
 混乱を収める手段として明治政府は「新貨切替(デノミネーション)」両から円に移行した。この際、1両は1円として交換できるものとした。そして、新紙幣として「明治通報札」を発行し、その際藩札は額面の平均6割の交換レートで交換した。さらに、旧藩債は旧公債として無利子で50年償還し、新公債は3年据え置き、年利4%、25年償還とした。

 *特に注目にあたいするのは、1868伝維新政府は「太政官札」という政府紙幣を発行した。これは我が国で始めて藩札を発行した福井藩出身の由利公正(三岡八郎)が発案した、通用期間13年間とする政府紙幣である。これは戊辰戦争の戦費確保のためだった。これは、発行金額が4800万両という膨大であったため信用されず、金銀貨幣との交換比率は4割程度だった。それに、戊辰戦争の戦費ということで新政府を応援するための資金であり、旧幕府を応援する人はそれを拒否しただろう。のち、「明治通報札」では交換利率は1:1になった。
 私が注目したのは、世界で始めて、政府通貨の通用期間を定めたということである。そして、この考案者が藩札(地域通貨)の発案者だったことである。著者が注目したのは、国債を始めた発行したときは無利子だったという点である。
 世界のこれからの新通貨を発行する場合、通用期間と金利に関する規定が一番のポイントになるだろうことは貨幣経済が崩壊するときに、一番のポイントになることからそれがいえるだろう



 第二次大戦後:
 ・1175億円の国債・1000億円を超えた戦時保証債務があった(当時の国民総生産約800億円)
 ・敗戦で、軍需省・陸海軍省は関係書類を全部消却・日銀の直接引き受けで、ハイパーインフレであった。戦時保証債務をすべて破棄すれば金融機関はすべて破産するのは必死だった。
 ・預金封鎖・新円切替の政策
    ・貯金、預金、信託などの引き出しは世帯主が300円、その他の者が100円に制限。2週間後の3月2日をもって、10円(のちに5円)以上の紙幣は無効にした。こうして財産課税(預金没収)の対象を確保した。その税金で戦時保証債務を支払おうとしたが、GHQによって「戦時保証債務を打ち切りにせよ」という通告を受け、名目的に戦時保証債務を支払うが、100%の戦時保証特別税を行って実質的に保証を全面的に打ち切った。そのため、企業と金融機関は相互の調整をとって処理しあった。しかしながら、物価は戦前と戦後では200~300倍に急上昇したため、残存する公債の額面価値を二束三文とし、結果として国の借金を自動的に消滅させてしまったといえる。

 そして、現在、公債に額はとても返済できない額にたっしており、それをどこまで返せるのか、それを決めなくてはならない時期がきたのである。それを決めるのは借り手であり、借り手からの視点からみた経済学が必要な時代なのである。
 

世界各地の国内総生産

日本の国内総生産

ジニー係数(社会における所得分配の不平等さを計る指標

自由主義的福祉国家
濃い赤:アメリカ
薄い赤:イギリス
保守主義的福祉国家
濃い青:フランス
中濃青:ドイツ
家族主義的福祉国家
薄い青:日本
社会民主主義的福祉国家
濃い緑:フィンランド
薄い緑:デンマーク

係数の範囲は0から1で、係数の値が0に近いほど格差が少ない状態で、1に近いほど格差が大きい状態であることを意味する。ちなみに、0のときには完全な「平等」―つまり皆同じ所得を得ている状態を示す。

目安として、一般的には0.2~0.3市場経済(自由経済)においては0.3~0.4。これは市場経済では競争を促すため、格差が生じやすくなる)が通常の値と言われている。なお、0.5を超えると格差が大きく社会の歪みが許容範囲を超えるので、政策などで是正することが必要とされる

二八の法則
 二割の人間が八割の富を独占し、残りの2割を後の八割の人間で分け合っている状態をいう。
2002年の所得再分配調査によれば、公的年金などの社会保障費を除いた「当初所得」合計額の50%を所得階層の上位20%が独占している。上位40%に広げると約80%の独占になる。これに対して下位20%が分け合っているのは当初所得の0.3%しかない。
☆日本の国民が1000兆円の債務者であり、債権者であるということは、いったいどういうことなのだろうか?
 その元になった現金が国民の貯金で、その総額が1400兆円である。さらに、日本の国債を発行して得た、60兆円ものアメリカの国債の債権者であるが、それが今年になって、アメリカのドルが1ドル90円までに下がったので、為替介入のときよりも約2割下がったため、その為替損失は12兆円である。政府がドル買いをして、3年くらいで、12兆円もの借金が増えた計算になる。

 ともあれ、今の日本の家計は1400兆円のうち、1000兆円が借金である。借金をしている国民の立場からすれば、この借金で得をしたのは今の国民であるが、それを返却するのは私たちの子供や孫である。将来を担う国民にふくれあがる借金を税金で、払わせることになる。でも、それは不可能なので、借金を借金して、さらに、孫の孫の代までひきのばすしか方法がなくなる。また、少子化で、働き手が減っているので、税収も落ちてくる。ふくれあがる借金を早いうちに帳消しにしてもらうしか、生き残る道はなくなる。

 この場合、4つの道がある。

1,日銀に国債を特別に立て替えてもらう。つまり、1000兆円分の紙幣を刷ってしまい、超インフレを起こさせて破綻する。

2,特別税を導入し、国債の債務者に償還したお金を支払うかわりに、100%の特別税を徴収する。つまり、借金を帳消しにする。(インフレが起きないが、国家の信用はまったく失われ、破綻する)

3.現金の代わりに、国有資産や優遇処置や賞与を与える。

国債の債権者からみると、

4 国債の持ち主はほとんどが金融機関であり、投資家である。日本の場合は海外の国債債権者は少ない。アルゼンチンの破綻のようにはならないで、家族的話し合いのような感じで、国債の帳消しがされる。

 
 この中で、一番の解決策は4の国債の債権者たちとの話し合いによる帳消しであろう。それは親分子分の関係なのだから、金融機関の破綻を助けるために国債を発行したときと、国の破綻を助けるために金融機関の助けをえるようなものだともいえるからだ。

 そして、もっとも悪いパターンが国債に債権者以外に国民にそれを負担させることである。解決策123は国の底力を奪ってしまうからだ。国債を発行し、それを買った者同士でそれを解決してもらうのが一番である。人が破産宣告したら、その借金は帳消しにされて、出直すことができるという法律のように、国もまたそれができることが必要であろう。

 それを早めにするのがいいので、国債の償還前に、債務者と話し合いをして、帳消しをする方法を見いだし、このまま借金に借金を繰り返す多重債務者のような国の財政状況にしないことであろう。今後、また借金経営に落ち込まないような政策をみいだしておくこともまた重要なことであろう。


 
4.資源の循環

 お金も循環が必要のように、資源そのものも循環があって始めて、一定の資源が確保される。それが循環できない生産と廃棄をしてしまうと、環境破壊とともに、資源の枯渇を生み出し、人類そのものが生存できない状態に追い込まれてしまう。

 そのため、資源の循環はお金の循環システムの基本となる生産廃棄システムである。

 それはこの宇宙の始まりから考察しなければならない。


宇宙の始まり

 宇宙の95%は水素とヘリウムであり、その質量比は3:1である。
地球の構成
物質名
含まれる元素

私たち(生物)のからだ

タンパク質、脂肪、水、カルシウム、等

炭素、水素、酸素、窒素、カルシウム、等

地球の大気

窒素、酸素、水、二酸化炭素、等

窒素、酸素、水素、炭素、等

地球そのもの

ケイ素、鉄・金などの金属類、等

ケイ素、鉄、金、銀、等


 資源循環でもっとも重要な元素は3つあり、酸素・水素・炭素であり、水が水素と酸素、燃やされて排出される二酸化炭素は炭素と酸素、そして燃やされるエネルギー源になるのがメタンなどの水素と炭素の化合物である。

 そして、現在の人類の経済活動を支えているエネルギー源が石油という化石燃料であり、この石油の構成要素は

炭素:83~87%、水素:11~14%、硫黄:5%以下、窒素:0.4%以下、酸素:0.5%以下、金属:0.5%以下
である。

 そして、それが燃やされて(酸化され)排出されるものは、

二酸化炭素と、水と、硫黄酸化物、窒素酸化物になり、二酸化炭素は地球温暖化の原因となり、硫黄酸化物、窒素酸化物は水と反応して有害な酸性雨の原因となる。

 資源循環を難しくしたのは、人類が化石燃料を使い出したことである。化石燃料は太古の地球の動植物が何億年もの歳月を経て変化してできた物質であり、それ以前、薪や炭を使うサイクルとはかけ離れたもので、化石燃料は資源サイクルが難しいもので、その資源を採掘しおわったら、そこで枯渇するようなものである。

 とくにサイクルがきかないものは原子力であり、その放射性廃棄物がその毒性が消滅するには何万年もかかるので、それもまたサイクルがきかないものである。

 そのため、森林資源は植林をすれば数十年数百年の単位で、資源循環するが、植林をしないかぎり、森林資源は枯渇して、地球は砂漠化する。

 また、食料である魚においても、それを無制限に乱獲すれば、食べられる魚は海からいなくなってしまう。

 このように、資源のサイクルはできる限り、短いサイクルにしたものにしないと、人類の資源は枯渇して、人類そのものの生存が難しいものになってしまう。

 
バイオ燃料の生産の矛盾

 そこで登場したのがとうもろこしやさとうきびを原料にしたバイオエタノールを石油の代わりにしようという政策である。
しかし、大きな矛盾が生じてしまった。とうもろこしは石油の助けが必要なペトロフードフードであり、25.4キログラムのとうもろこしに必要な石油は1.9リットルである。

 しかも、とうもろこしが石油にかわるエネルギーとして生産されると、食糧難が起きてしまう。トウモロコシの価格が上昇し、食料かエネルギーかとの選択が必要になってきてしまう。

 その結果、とうもろこしを原料にした新エネルギー創出は1ガロン当たり20%であり、二酸化炭素排出量はガソリン使用よりも15%少ないだけであり、もっと効率がいいブラジル産大豆の原料エタノールも、その増産には熱帯雨林を伐採せざるをえなくなるので、二酸化炭素の排出量の増大をまねく。

 米再生可能燃料協会によると、どんなにバイオ燃料を生産できてもガソリン消費を12%減らすことしかできないという。

 そのため、どんなエネルギー源であれ、人類の需要にあわせたエネルギーの確保が必要になり、人類の欲望にあわせてエネルギーの確保は人類の自滅を招く。

 
 資金循環は「増やして返す」という「拡大再生産」の原理で回っているが資源循環は「自然から有用物を採り入れ、廃棄物を自然に戻し、それを資源として再生」される、「単純再生産」の原理で回っている。
 しかも、自然界は廃棄物を資源に再生するには長い時間と年数が必要になる。

 現在、世界規模の金融経済はその金利と投資による拡大再生産で極端に大きくなり、それが、自然の代謝速度を大きく上回ってしまい、自然からの搾取、環境への大量廃棄が行われ、地球環境がやせ細ってしまっている。

 地球環境を疲弊させ、社会経済の格差拡大と、不景気拡大の根本原因は、「よりお金を儲けようと金融システムの拡大再生産」にある。

5.ドル石油本位制の崩壊
1971年8月15日
 アメリカの一方的通告 金本位制からドル本位制になった。
 ドルを増刷する根拠になったのはアメリカ国債になった。
 
 アメリカドルが世界の通貨の機軸通貨になった原因は、原油代金の決済が米ドルだけだったことによる。
 そのため、金が石油に代わって、
「石油ドル本位制」になり、ドルの価値を保証したものになった。
そのため、
 石油産油国・輸入国は米国債を買わざるをえなくなった。
2000年9月、イラクのサダムフセインは、「石油の支払いに米ドルではなく、ユーローのみが有効と宣言した」
しかし、その3年後戦争をしかけられた。
 2007年12月イランは「イラン学生通信(ISNA)は8日、ノザリ石油相の話として、同国が原油のドル建て決済を完全に中止した、と伝えた」ユーローや円で決済がされることになった。
 アメリカがイランに経済制裁をしており、それが無関係とはいえない。
 
6.労働力の最低賃金をめざすレース
 世界的資本主義は比較後発国(中国やインドなど)の安い労賃に多くの雇用をもたらす、一方、比較先発国(アメリカや日本)に、失業者と低賃金労働者の増加をもたらす。その結果、比較先発国の購買力は低下し、世界全体の購買力(景気)は低下する。
7,環境基準の低さをめざすレース
 「公害健康被害補償法」により汚染物質排出企業から制裁的課徴金をとることにしたら、その排出企業が規制が一番最低の地域に進出し、そこで一番最高の公害をまき散らし、全世界に汚染が拡大してしまった。 
8.世界の人口爆発に急ブレーキ
 世界の合計特殊出生率の世界平均は1970年代前半の4.5人から2.8人台に急減した。


資本主義社会→消費縮減→資源制約・環境制約・人口減
環境への侵害量=人口と一人当たりの侵害量の積
エネルギ消費=人口と一人当たりのエネルギー消費量の積
10.焦眉の急は「地方の復活」

 1950年代全国総合開発計画の最大目標は「中央と地方の格差是正」だった。そのために大きな「公共事業」がされた。1970年代「日本列島改造」ブームとなった。その結果、公共事業によって嵩上げされた所得水準はさらなる公共事業を必要とし、地域住民に「公共事業依存体質」を作り出してしまった。
 それと併せて、道路などのインフラが整備されると、中央資本の大型スーパーや量販店が進出し、地方にもともとあった消費まで含めて根こそぎ奪っていく。
 しかも、1980年代「行政改革」により、公共事業の財源の主客を逆転させる。そのため、自治体にさせた借金が公共事業の主財源になったのである。
 そのため、公共事業でもらったお金以上のお金を中央の経済機構へ返済する羽目になった。地方は経済衰退し、働き口を失った労働人口は大都市に移動し、人も職場も大都市に移動するしかなくなった。
 結局、新幹線や高速道路と引き替えされ残ったものは、
「活力を失った地場経済と、うずたかく積まれた借金の山と高齢化する人口構成」だった。

 今すぐに始めなければならないのは、「地産地消」のできる経済環境の再構築と借金の後始末である。
とくに、ふくれあがる借金をなんとかしなければ、夕張市の轍を踏むことはさけられない。そうしなければ、若い世代にますます住み続ける意欲を失わせてしまう。

 人口を養う食料生産力からいってもより大きな人口吸収力があるのは大都市よりも地方であり、これから本格的に消費減少に対する社会的摩擦を最小限にするためには、少なくても全国が同じ割合で、できれば人口過密な都市からより多くの人が減っていくことが望ましい。
 現在の日本では大都市より、かって栄えた地方を救うことが焦眉の急なのである。
11.資本は富であるといより負債である・・ソディ

 その結論は、蓄積した資本は「けっして古びたり消耗したりすることなく、ただ一方的に増大する」

 2007年度政府予算には、9兆5143億円の「利払い費」が計上されていた。これは新しい借金で手当するしかない。1秒間に約30万円ものスピードで、国債が増え続けていく計算になる。
12、本当のコスト負担

 仮想水・・仮にその物品を輸入せずに輸入国で作ったとしたら、どれだけの水が必要になるのか。
沖大幹 (東大生産技術研究所)の試算によると、2030年時点で、
 日本の食品可食部1トンに対する水消費量は
 米・・3600立方メートル、大豆・・2500立方メートル、小麦・・2000立法メートル、トウモロコシ・・1900立方メートル
 鶏・・4500立方メートル、豚・・5900立方メートル、牛・・20700立方メートル
 1年間に日本に輸入する仮想投入水の総量は工業製品分を含めて640億立方メートルに推定される。
 これは国内の年間灌漑用水使用量590億立方メートルを上回り、日本の総水源使用量約900億立方メートルの3分の2にあたる水量である。
 日本は大量に「ペトロフード」を輸入することで、「バーチャルウオーター」を大量輸入し、石油と水を大量消費していることになる。

 利用可能な淡水は、地球の総水量の0.5%以下でしかない。この淡水は希少な資源のため、莫大な利益をあげる商品として取引の対象になっている。

シューマッハ・・
 「市場は社会の上っ面にすぎず、その意義はその時々の瞬間的な状態を示すことである。モノの背後にある自然・社会の事実にはまったく関心が払われない。ある意味では市場というものは個人主義と無責任が制度化されたものといえる」

「自然は料金徴収所を持っていない」

13.読書感想

 お金を発行する金額の元になるものが金の生産量から、アメリカの国債の額になった。その国債の元になるのが石油の産出量である。しかし、石油はいつか枯渇することがわかっているが、その埋蔵量はさだかでない。また、石油が無限にあるかのように思いこんだシステムが金融システムの無限の負債を増大である。

 石油の枯渇以前に、金融システムの崩壊が始まってしまった。それはお金(負債)の製造を無限に行うために、社会も、自然資源もついていけないからである。

 経済システムには、安定した物価と給与を求めているが。それを支えるお金の発行額を定める基準を何にするかを定めなければならない。その基準は人間にとってもっとも貴重なモノにすることが必要であり、かつまた、それは無限にあるものではないモノであり、だれでもが享受できるものでなくてはならない。

 しかも、人類だけでなく、どんな生命体にも関係するものでなくてはならない。(それが環境問題も考慮したもの)
 となると、淡水が一番の候補となるのではなかろうか?

 世界中の利用できる淡水は限られており、それにどんな生命体も依存している。今のお金システムは自然の環境を維持するシステムと連動しなくては安定した生活は保障できない。

 そこから人類が生存に必要な水の一人当たりの年間の量の総合計をお金の発行額にしたらどうなのだろうか。しかし、貨幣の発行額を制限しても、国債を発行した場合はやはり無制限に金融額がふくれあがるので、最高負債を制限する法律も同時に必要になる。それは1年間の総生産額内にとどめたらどうだろう。いわば、安心して返却できる金額というのは、災害があったりして、1年間で立て直しがきくような形にしたらいいのではなかろうか。

 ともあれ、各国の通貨の変動相場が不安定である要素も、安定した経済は期待できない。そのため、機軸通貨はアメリカの国債に頼ることなく、安定した共通の通貨を一つ発行する必要があると思える。それを淡水の量を元にして通貨にして、その通貨の量が金融市場で増減することがないように、その通貨の金利の禁止(金利はゼロ)にすればいいだろう。

 各国の通貨は交換比率は変動相場制にして、その国の事情にあわせて発行すればいいだろう。国連で発行された共通紙幣は常に世界の淡水の量にあわせたものでなくてはならないようにすればいいと思える。

 肝心なことは、その通貨量とその通貨の負債額が一定の制限内であるということが大事であり、実際の水とその通貨が交換できるということではなく、人がお金に対する意識と理論を水に求めるということだけである。水はいわば象徴的なお金の代名詞である。そのため、負債はいわば水蒸気として考えられ、その負債の量も1年分にすることにすればいいだろう。

 しかも、水は常に汚れ、新しくきれいな水であることが必要のように、毎年、共通貨幣は更新され、昨年の貨幣は毎年減価される。その減価の率は毎年政策で決定され、そこで得た減価の量を人類の生活の格差を平均化させるようないわば税率でされればいいだろう。

 つまり、減価した共通貨幣は水が低きところに流れていくように、貧しき国民に毎年減価された分の新貨幣が流れていくようにする。

 これを水本位の共通通貨と名付けたいと思う。