ベーシックインカムということ

  basic income を直訳すると基礎収入である。

 今の世界はお金がないと生きられないので、生きていく上で最低限の収入のことをさしている。

 国の最優先はすべての国民の命を守ることであるから、国民の命を守る上で最低限の収入を保証することから始めるのが当然であり、そして、どんな国民でも生きていく権利と義務が平等に与えられることを国が第一にすべきことである。 

                       
→日本国憲法第3章国民の権利及び義務
 第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする
     
  そのため、日本では生活保護制度があるが、その不正受給者もあって、その審査も厳しくなっている。しかも、国民年金よりもはるかに多い生活保護収入が保証されているのも矛盾しているし、もし働いて収入があると、その分生活保護費が差し引かれるので、働けても働かない方が得策になってしまうという矛盾がおこる。それに厚生年金と国民年金の差が大きいのも矛盾している。

 国民が生きる権利と義務はどんな国民にも平等に与えることがその国の法律でなくてはならないはずである。

 国民が、老若男女、健康病人、金持ち貧乏人、どんな境遇であれ平等にその国民が生きる権利と義務を保証する最低限の収入を与えなくてはならない。

 もしベーシックインカム(基本収入)が生活保護費であったならば、その審査はその人が国民かどうかだけであり、かつ、その国民がどんな経済的境遇であっても、等しい金額が与えられるはずである。

→第14条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。 

 すなわち、国が最初に行わなければならないことは、すべての国民に等しくベーシックインカムを施すことである。また、貨幣の発行はまずベーシックインカムをするためのものであるといえる。

 国がたとえ小さな部族であったら、青年が狩りと採集にいって食料を採ってきて、部族全員に等しく食べ物を分けることで、部族の団結が強まり、かつ部族の意義があるようなものである。

 食べ物を等しく分け与えるのがベーシックインカムであり、その食べ物の配給券(交換券)が貨幣であるといえるだろう。

 「働かざる者は食うべからず」という考え方は「働けない病人は死んでしまえ」ということと同じ残酷な暴論である。ベーシックインカムは「働く人も働けない人も等しく食べられることを保証する」考え方である。

 しかし、「働かざる者は食うべからず」という真意は別にあって、その相手が金持ちやなにもしないニートだったら、的をえた深い言葉である。金持ちやニートは生きていけるベーシックインカムがあるから、苦労して働く意欲がわかない、食べるために働く必要がないと思いこんでしまうため、それをいさめ力強く生きていく力を身につけるための勇気づけである。

 ベーシックインカムを反対する理由は「働く意志を阻害する」とするものだろう。いわば、生活保護費のようなもので、働けば逆にその分保護費が減るので働かない方が得策というのと同じである。

 この「働く意志を阻害する」のは、現在の貨幣システムから起こるものであり、ベーシックインカムが施行されないために起こるのである。

 人が働く理由は「食べるためだけではない」のだ。キリストいわく、「人はパンのみで生きるにあらず」、つまり、「人は食べるのみで生きるにあらず、自由で幸せになるためでも生きる」

 憲法3章13条  「・・・生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については・・・最大の尊重を必要とする」

 とあるように、「働く理由」には、生命=食べること、自由及び幸福追求=人間らしさの二種あるからだ。

 ベーシックインカムは等しく「命」の保証であって、「自由及び幸福」の保証ではない。「自由及び幸福」は個人個人別々であり、等しくないものである。ときには、「自由のために死す」というような英雄もでてくることだってある。

 現実に、私自身はこの世の中が「仕事か、お金か」という選択を迫られているとき、ほとんどが「仕事」より「お金」を選択せざるをえないことに怒りを感じることが多い。

 「仕事」とは「働くということ」であり、「お金」とは「現在の貨幣システム」のことである。「仕事」は「自由と幸福」に関連し、「お金」は「命」に関連する。そのため、「命」を失ったら、「自由も幸福」も消えてしまうと考えられるからだ。

 画家が「売れる絵を描く」か、「自分が満足する絵を描く」か迷う姿がそこにある。

 こうした、「命」と「自由と幸福」の矛盾が「お金」を介して起きるのは、「現在の貨幣システム」が「命」と「自由と幸福」という性質の違うものをあたかも同じようにごちゃまぜにしているからである。

 「食べ物を分け合う」お金と、「食べ物を奪い合う」お金とは別々のものでなくては矛盾混乱するからだ。お金は単なる食べ物の交換券のみならず、分け合う整理券でもある。

 そのため、「食べ物を分け合う」ためのベーシックインカムのための「命を守る」貨幣と、「個人の自由と幸福を促進」する貨幣と二種類必要になる。

 「命を守る」ベーシックインカムの施行を目的にした貨幣は「貯蓄税付き貨幣」であり、「個人の自由と幸福を促進する」貨幣は現在の「利息付き債券」であろう。
 
 生活を支える会社の多くは株式会社である。株式とは「利息付き債券」の一種である。最近とくにNPO法人の会社も増えてきた。NPO」とは、Nonprofit Organization  (非営利団体)であり、お金(営利目的)ではなく仕事(非営利)のための活動をする会社である。その資金は会費・寄付のように、「ベーシックインカム」的なものであり、「貯蓄税貨幣」で成り立つような会社である。

 これからは、株式会社を是正するために、もっとNPO法人が増えていくように、「貯蓄税付き貨幣が発行され、ベーシックインカムを施行するような時代がやってくるに違いない。

 

カテゴリー: お金って何だ, 社会問題, 自然に生きる パーマリンク