最近のTPPは判断が先送りされたが、これを関税ゼロをあせって決めようとしたのは、どうやら韓国がEUとのFTAで、米以外の関税を撤廃したためのようだ。韓国がTPPにまだ参加をしていないので、韓国に負けまいとして菅直人があせったという記述が朝日新聞に書かれたようである。
韓国がEUとの関税を米以外ゼロにするにあたって、農家の反対を押さえられたのは、農家の所得保障をしたためである。
世界全体が国も経済格差をなくし、貿易を盛んにするには、関税を撤廃した方がいいに決まっているが、これは世界の経済だけを見ただけのもので、世界の国民の生活全体を見ていない。
世界の人々の生活は経済だけで幸せを築かれるものではない。金がありあまるほどあっても、病気にも、災害にもあい、生活が安全とはいえないのである。
そもそもお金そのものが何なのかをはっきりさせておかないと、生活とお金の主従が逆転してしまう。その最も良い例が「お金のために働く」のは目的と手段を逆転させてしまったものだ。本来は「働くためにお金が必要」だからだ。働くのが目的でお金は手段である。
これは、働く(生産する)ためのお金(発行額)が必要であるというのが、健全な国民生活を実現する基本である。そのため、お金の発行額は国民総生産額であり、債券などの金融商品の発行額は未来の国民総生産額にする必要がある。
それが合わないとインフレかデフレになる。お金目的に生産すると、目的と手段が逆転してしまい、お金の奪い合いという競争が激化する。その勝者と敗者の差はまさに生死の差くらいに激しくなる。これは戦争と同じ結果になる。
お金は本来、100人の村があったら、そこで生産された食べ物を100人で平等に分配する手段であり、そうして、100人の村人全員がどんな災害や病気になっても、一緒に生きられる力になるためのものである。
世界共通のお金はまだない、それぞれの国の通貨がある。それはその国で生産されたものを平等に分配するためのものであり、他国で生産されたものを奪う手段ではない。貿易は他国と協力しあってともに生きるためであり、国の損得が優先されるものではない。
今回のTPP問題を解決するには、農林漁業牧畜などの国内の食料生産者の所得保障がポイントであろう。しかし、所得保障の基本は国民すべてに必要である。それがベーシックインカムの主旨である。それは最低限の所得保障なのであるが、それもお金だけで判断することは危険である。
そこで、国内の食料の自給率を100%にし、その食料を国民すべての平等に分配されることが、本当のともに生きていくための基本にすべきである。
そのためには、国内の食料生産の自給率が100%になった分の通貨を発行させることである。そして、その通貨は食料にあわせた腐敗率を1年にして、1年の期限通貨を発行することで、それが貯蓄したり、奪いあうこと、また税の徴収も必要なくなる。
こうすることで、国民のすべては自分に必要な食料は実質的に無料でもらえることになる。他国から安い農産物が入ってきても、それらと競争することはなくなる。
この国内食料通貨は最終的にその生産者に集まる。その通貨を日銀券に一定率で交換すれば、それが農家の所得保障よりも大きい、文化と技術保証になってくるだろう。