自家製採種は自然循環のための基本の基本だ

 以前から、野菜の種のほとんどが外国産なのかが不思議でならなかった。自国で作っている野菜であっても、もし、その種が海外で作られているとしたら、それは食べ物の自給率から除外した方がきちんとしたパーセンテージが出てくるはずだ。

 国産の種だと思っている「聖護院ダイコン」はイタリア産、京都の九条ネギは南アフリカ産、カイワレ大根はアメリカやヨーロッパ産である。そして、その種の製造年月日は秘密にされ、ただ、最終発芽試験年月日、発芽率何%、有効期間1年間としか表示されない。それらは1年以上前に生産されたものがほとんどであるのは、植物検疫、試験栽培、遺伝子検査が国内に入る前に必要だからだ。

 種の問題で最も大きなのは、今の野菜の種のほとんどがF1種だということだ。F1種とは、種苗会社が秘密に製造されているものでけして公開されていない種であるが、大概の作り方は次の通りである。

1,まず種が実らない作物の株を見つける

 (雄性不稔という技術で、雄しべが退化して花粉が不完全になった株、いわば無精子症の植物を母にし、それと新品種に必要な花粉である父を掛け合わせてできる新品種がF1種である。

2,品種に必要な花粉を風を利用してばらまく

3,このF1種は雑種強勢で1代しかその品種は持続しない。

(F1種の種で自家採種(F2)しても、同じ品種ができる確率は低く、たくさんの品種の作物ができてくる。

4.同じ品種の種はどうしてもF1種を作りだした種苗会社でしか買えない。

5.毎年、農家は自家採種ができないで、F1種である種苗会社で買うことから始めなくてはならない。

6.種苗会社はまわりに花粉で混種しないような広い場所で、F1種を作り出し続ける。

 さらに、技術は進歩して、種のならない無精子種を遺伝子組み替えで作り出す。その方法は2通りあって、1つは「パーティクルガン法」といい、金の小さな粒子に組み替えた遺伝子をまぶして細胞に打ち込む。もう1つは「アクロバクテリウム法」といい、バラなどの植物の細胞の中に入って自分の遺伝子を組み込んで根頭癌腫病を引き起こす植物土壌細菌の性質を利用した方法で、一般的なのは後者である。

 この遺伝子組み換えした作物は花粉の飛散によって、同じ仲間の植物を次々に遺伝し組み替え植物に変えていく。また、遺伝子組み換え作物の根から土壌細菌に移動して細菌間に広がり、種の違う植物をも汚染する「水平移動」もおこすといわれる。

 最も怖いのは「ターミネーター・テクノロジー」と呼ばれる、遺伝子操作によって、種子の次世代以降の発芽を押さえてしまう技術。(これは世界中から反対されて今は行われていないが、それで作られた植物が増えたら、まるでインフルエンザウイルスのように世界中蔓延するのは時間の問題だ。

 こうしたF1種の植物が増えると、世界の野菜はすべて同じ品種になり、画一化された野菜の形や味のものばかりになり、地方独自の野菜は絶滅することになる。そして、すべての食料の種は自家採種ができなくなり、世界大手の種苗会社が独占することになってしまい、その会社に世界は支配されてしまうことになる。

 これを促進するような記事がアメリカの上院で可決された510法案「食品安全近代化法」だ。

こうしたF1種の野菜が世界中で広がる危険性をうったえ、各農家や家庭菜園の人たちが、自家製採種をすることで、昔からの野菜の固定種を守りつづけ、かつ、その地方や地域にあった品種を自家採種で作ることが大事であることを訴えているのは「いのちの種を未来に」の著者野口勲さん。彼は野口種苗研究所で地方や世界の固定種の種を集め販売して、食料の自給と安全とそのおいしさを守る仕事をしている。

 世界のお金も100人の村のたとえのように、世界の金はたった100人のうちの6人で独占されているように、世界の食糧もまた今のままでは同じように独占されてしまうことになりかねない。

 日本の自給率をあげるという問題の奧には食料そのものを作り出す種の生産を自家製採種にしないと、自由をうばわれ、餓死させられる時代が隠されているように思う。

 

 

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