基本通貨のシミュレーション

自由資本主義がうまく稼働するかどうかをシミュレーションすることができる。

それは特別の設定をする必要はなく、麻雀のようなゲームを自由市場の場として見るだけで可能となる。

4人の国家として、そこで自由競争する経済のシミュレーションがそこにある。

4人=国民、親=政府、点棒=貨幣、勝ち負け表=日銀券、半荘(ハンチャン)=一巡(1ゲーム)

に当たる。これは今の中央銀行システムにおける自由競争市場はギャンブルをして稼ぐものである。例えば、株の売買では、誰かが得をすれば誰かが損をする。いわばギャンブルの勝負である。携帯の顧客を取り合う企業戦争もまた運と技術と資本でギャンブルするようなものである。

 正当な自由競争をする必須条件は参加者はすべて平等でなければならない。麻雀ゲームにおいて、各メンバーに同額の貨幣が与えられて始めて成立する。もしも、不平等であったならば、正当は自由競争はできない。1億持っている資産家が月10万円稼ぐのはやさしいが、借金を抱えたサラリーマンが月10万円を稼ぐのは至難の業である。

 さらに、自由競争には平等で始まり、最後は平等に終わることも必要である。それは人が生まれ死ぬということと同じで、生まれる前の世界と死んだ後の世界は同じ世界であるからだ。人が自由競争できるのは始まりと終わりの間だけである。

 麻雀で4人がそれぞれ親を一巡するとゲーム終了になり、点棒は全部集められ、2度目のゲームを始めるときはやはり平等に点棒は与えられる。そして、その自由競争した勝ち負けの数字は紙に記録される。

 点棒の数は一定の数で充分である。それが貨幣が商品交換に必要な数だけ発行されることと同じである。

 1ゲームをするときに、誰かが箱点(破産)した場合、他の勝った者から借金をしてゲームを続ける。これが債券発行になる。そして、その債券は勝負の記録表に書かれるが、そういう場面はあまりないので、あえて、点棒を増やす必要はない。

 今の日銀券は点棒ではなく、勝敗の結果数字である。しかも、その数字は永遠と残るものである。つまり、自由競争の終わりはない。しかも、自由競争する時点から不平等な条件が与えられている。

 そのため、国民の格差は天と地ほどの差が生まれ、自由競争の場ではなくなっている。金をたくさん持ったものが金のない者を支配している。格差が拡大すればするほど、債券の数も多くなる。そのため、勝敗表の数字はほとんどが債券の数になるのである。それは麻雀に参加する場合は、まず借金することから始めなければならないからである。

 この自由競争の麻雀シミュレーションから、正当なギャンブル市場を導き出すと、もっとも必要なものは、点棒にあたる基本貨幣であり、自由競争の始めと終わりである。

 そこで、点棒を基本通貨、勝敗表数字を日銀券、そしてゲーム続行のための仮通貨の債券の3つの通貨が必要になる。

 そして、貨幣が商品交換のための道具であることから、それぞれの貨幣にあった商品・サービスをあてはめることができる。

 中央銀行券と債券は世界中で発行され流通されているが、自由競争をするための基本通貨がまったく発行されていない。それが今後必ず必要になる貨幣である。それで、債券や日銀券はそのまま今まで通りのなんでも商品交換できる通貨でいいが、基本通貨は人が自由競争できるための平等に与えられるべき資産とチャンスである。

 いわば、国から与えられた基本的人権としての経済権であるから、ベーシックインカム(最低生活保障)であり、いわば年金に相当する。人権を守る商品とは最低生活必需品である衣食住と教育・医療である。それ以外の高級品や金融商品などは交換できない。いわば生活最低必需商品券に当たるのが基本通貨である。

 そして、自由競争期間に当たるものとして、基本通貨の通用期間を設ければいい。これで、正当な自由競争ができる最低条件がととのう。

 その一例をあげる。

 毎月10万円の基本通貨(生活最低必需商品券)を20歳以上の成人すべてに支給する。その通用期間は1年間であり、1年後は使えない。

 こうすることで、1年の自由競争ゲームを始めと終わりを繰り返すことができる。それはいわば物々交換と同じになる。例えば、リンゴと米を交換するときにお互いに基本通貨を利用すればいいことになる。また、介護ボランティアは基本通貨を使えば、相互に家族を有料で介護ができるようになる。

 ボランティアが必要なのは格差があった場合である。経済格差がなければボランティアは必要ない。

 問題は、その基本通貨の通用期限が近づいた場合はほとんどボランティアになるので、拒否したくなる場合がでてくる。とくに、基本通貨が1年後にはもっとも多く集まる優良商店や医院である。

 その場合、期限切れ通貨を1年間に限って税金や公共サービスで使えるようにするのである。そうすれば、期限切れ通貨はすべて発行した国にもどることになる。また、優良商店や医院に対する援助金として、その期限切れ通貨の何割かを日銀券に交換できるようにすればよい。

 今後、国内の食品が消費税が増税されて高くなり、また、TPPにおける海外からの安い食料品が大量に入ってきた場合、消費者は日銀券を使って海外の安い食料品を買うだろうか? いいや、基本通貨で、高い国産の食料品を買うだろう。それは基本通貨の方は国から無料で支給された食料券であるから、実質タダだからだ。

 そして、農家の商品はよく売れ、さらに生活保障がされることになるので二重のよろこびが実現できることになる。

 この基本通貨こそ、先日書いた自治通貨である。最初自治体の規模で実験して、最終的には日本全土で通用できる基本通貨になることが望ましい。失敗が少なくなるからだ。それは海外でも同じであり、アメリカの州毎に基本通貨を発行することから始めれば、不正な自由競争で格差拡大した経済社会が崩壊する防御策になるだろう。

  

 

 

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