不労と金貸しは自由、労働と金借りは奴隷

 NHKスペシャルの「なぜ人間になれたか第4集」が昨夜放送された。(その動画は中国動画サイトyoukuの検索「NHKスペシャルヒューマン」で見られる。2・3集は見られ、数日たてば4集も見られる)

 一番印象に残ったのは、メソポタミア文明の発祥地・世界最古の都市であるテル・ブラク(シリア北東部・ハッサケ地方) 麦のお金が使われ、経済格差がおきると、そこで4百人の惨殺された死体が残飯と一緒に捨てられていたという事実だった。大量殺人が行われる原因がお金にあったことがうかがえる。

 さらに印象に残ったのは、アフリカ中部のカメルーン、そこの狩猟採種生活するバカ族に最近貨幣が使われ出して、どう社会が変貌していくかが、実際に解ることである。

 バカ族の奥地のジャングルではお金は必要なく、そこでは収穫したものは「なんでも平等」に分配するというルールがあり、それが当然であるため、分配された者が「ありがとう」の心はない。

 しかし、国道沿いのバカ族にお金が流入し、狩猟採種したものの一部を都市からきた商人にお金に換えてもらい、そのお金で、塩や石鹸を買う。さらにもっとお金を欲しくなり、高く売れるカカオ農園を作りだし、個人主義が当然になっていき、現代社会のように発展と格差社会を作りだしていくことが解る。

 バカ族の子供の言葉はとても印象的であった。

「昔は分かち合うために働いていたと、お母さんは言うけれど、僕はやはりお金が欲しいです

 こうしたお金社会において、自由とは何か? 

 ギリシャのアテナイで銀行家の奴隷であった人が、金をたくさん稼ぎだし、平民の資格を得たことも自由であった。

 もっと昔、紀元前2400年メソポタミアの都市から出土した文献にこう記されていた。

 「都市ラガシュに自由をもたらした。母を子に、子を母に戻し負債を帳消しにした」

 という、借金帳消し制度「アマギ」があったことである。

 都市の支配者に税金として麦を納めるのだが、その麦が納められなかった場合は、借金をする。その借金がたまって、支払えなくなると、家族は引き裂かれ、子は奴隷として支配者に売られていった。

 しかし、引き裂かれた庶民はまずます労働意欲がなくなり、税金も払えなくなってきた。そのため、年に1度、借金帳消しすることで、バランスをとって、社会を持続させていた。

 この借金帳消しが自由であったことを知ることができる。逆に借金のために働くことは束縛・隷属であり、借金のために働く人のことを奴隷であるともいえる。

 つまり、金は個人主義と経済発展と格差を生み出し、金貸しである自由人と金借りである奴隷人とを作りだしたことになる。それは古代だけでなく、現代でも同じである。

 この4集の最後は、「発展と格差 そのバランスをとることができるのか?」というテーマのもと、ラトカーズ大学でのマネー配分の実験結果で締めくくっている。

 見知らぬ人同士二人に、くじ引きで、金持ちと貧乏人になってもらい、金持ちには80$、貧乏人には30$をあげ、実験開始する。追加の50$を金持ちにあげる場合と、貧乏人にあげる場合において、金持ちの脳にある快楽中枢 腹側線条体(金儲けすればするほど快楽度が増す)の変化を調べるのである。

 80$持っていた金持ちがさらに50$もらうと、腹側線条体は快楽度を増した。しかし、30$持っていた貧乏人に50$が渡され、自分と同じ80$になった場合、金儲け快楽予測とは逆のさらに5倍の快楽度が増したのである。

 この実験結果から、分かち合いが人類を進化させ、それが最も望むことであるDNAがあることがわかった。

 そして、遠い外国の人、ずっと未来の子供たちと、はたして「分かち合い」することができるだろうか? そこに人類の未来がたくされているというテレップが流れた。

 

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